関口直人さんの娘さん

ガンビアの伝統的な太鼓の奏者、関口直人さんのご自宅でお世話になって2日目。

直人さんと道を歩いていると、ムスタファ!と声がかかる。

直人さんのガンビア名だ。

小さな子どもから高齢の人まで、びっくりするくらいに声をかけてくる。

日本では、上山さん!と近所でいろんな人に声をかけられることは想像できない。

でも、ガンビアではそれが日常のようだ。

世代を超えて声がかかる。

もちろん、直人さんが地域に溶け込んでいるということが大前提にあるが、温かい気持ちになる。

街に出ても、直人さんを呼ぶ声が聞こえる。

ミュージュシャンの友だちだったり、その友だちだったり、太鼓を叩いたイベントにいた人だったりだ。

こちらの人は挨拶とともに、握手をする。

なんなら握手をしながら話をしたりする。

彼にくっついている自分にも、みなさん律儀に手を出してくれる。

言葉で触れて、手で触れて、相手を大切にする心が現れているようだ。

日本では時間がもったいないから、会釈だけで終わることが多い。

だけど、挨拶に少し時間を使うことで、その時間が相手を敬うことにもなるような気がする。

忙しない日本に戻ってどこまでできるかと思いつつ、大切なことだなと教えてもらっている。


こうしたいい習慣がある一方で、深刻な問題もたくさんあるようだ。

ある日突然、友だちがいなくなる。家族ごといなくってしまう。

こんなことが日常的に続いているという。

こちらでは「バックウェイ」というそうだ。

いわゆるボートピープル。

命懸けで、イタリアやスペイン、ドイツを目指して、ボートで旅立っていく。

もちろんすべての人がそれらの国に到達できるわけではない。

劣悪な環境のなか、身を潜めつつ移動手段を変えながら夢に賭ける。

残念ながら途中で亡くなってしまう人もいるし、密入国できたところでイミグレーションに捕まってしまい、リンチの末に亡くなったり、ボロボロにされた上で強制送還されてくる人もいる。

うまく入国できたとしても、自身を証明するものが何もない状況での危うさは半端ではないだろう。

直人さんの友だちや知り合いでも、急にいなくなる人が何人もいて、聞くと「バックウェイ」ということが少なくないそうだ。


リスクの高い危険な賭けだと知りつつ、若者や働き盛りの家族は、ヨーロピアンドリームを目指す。

働きたくて、うずうずするくらいパワーが有り余った人たちが、そのパワーのはけ口をどこに求めるのか。

働く場所さえあれば、彼らはリスクの高い命懸けの旅をしなくて済む。

仕事は、経済的な利益をもたらすことはもちろんだけど、人としてのみなぎるパワーを消費という生理的な欲求の満たすこともはらんでいるのかもしれない。

自身の考え方や表現が浅はかで申し訳ないと思いつつ、テレビやネットで見ていた遠くのことが、日常にある場所にいることを心に留めておきたい。

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