2/17、チュニジアの玄関口である
首都チュニスに降り立ったとき、
僕はそこがアフリカ大陸であることを
忘れてしまいそうになった。
街を行き交う人々は驚くほど白く、
どこか欧州の空気を纏っていたからだ。
けれど、南へと向かうにつれ、
風景はその表情を劇的に変えていく。
地中海の柔らかな風が
砂混じりの乾いた風へと変わり
景色が砂漠の色に染まっていくように
人々の肌の色もまた、白から褐色へ、
そして深い黒へとグラデーションを
描きながら変化していくのだ。

一昨日まで滞在した砂漠の町ドゥーズには
古くからこの地で生きる
ベドウィンだけでなく
かつて奴隷として連れてこられた
サブサハラの人々の子孫たちが
静かに暮らしていた。
さらに近年では、西アフリカの国々から
欧州への命がけの密航を志し、
旅の途上で力尽き、この地に留まる人々も
いるという。

サハラというとてつもなく巨大な壁が
立ちはだかっていても
大陸が地続きであるということは
これほどまでに豊かな人種の階調を
生み出すものなのか。
その事実は、僕にとって深い興味を抱かせる。
昨日たどり着いた南部の島、ジェルバ。
ここでもまた、黒い肌の人や、
複雑に混じり合った血を持つ人々が暮らす。
四方を海に囲まれた島国である
日本に生きる僕たちは
こうした大陸のダイナミズムとは無縁の場所にいる。
だからこそ、物事を「0か1か」という
デジタルな二分法で捉えてしまいがちだ。
しかし、世界の多くの国々は
こうした人種のグラデーションの中に成立している。
それぞれの歴史が異なり
信じる宗教や価値観が食い違うこともあるだろう。
それはときに激しい軋轢を生むこともあるけれど、
同時に、社会の柔軟性や、人としての根源的な優しさ
そして互いに助け合う「相互扶助」の精神を育む
土壌にもなっているのではないだろうか。
多様な色が混ざり合う
この土地の光景を見つめながら
僕は、割り切れないものの中にこそ宿る
人間の「いのち」の強さを感じている。
