思いがけない休日

12日間、リヤカーを引いて歩き続けてきた。
体に疲れがたまっているときに
フカフカの布団で寒さを気にせず
寝られるのは本当にありがたいこと。

そこに、お風呂と夕食と
そして楽しい会話があると
至福のひとときになる。

明日からまた頑張ろうと
思っていたら、
お母さんから、サプライズなご提案が。
「もう1日ゆっくりしていったらどうですか?」
ぼくの答えは、無言の「はっ?」だった。

予定にはまったくなかったこと。
だからその答えを持っていなかった。
想定外のことにびっくりしたが、
この旅では、ご厚意には積極的に甘える
ことにしているので、喜んでお願いをした。

かなり疲れていたから
ドンピシャのタイミングで
提案をしてくださったことに本当に感謝だ。

 

人とモノの関係性

質のよい十分な睡眠をとり朝を迎える。
すっきりとした目覚めのあと
いただく朝食は美味しい。

そして、午前中は部屋で
ゆっくりと過ごす。
歩かなくてもいい。お店を開かなくてもいい
と思えることが、気持ちをラクにさせてくれる。

おばあさんの部屋には縁側のような場所がある。
そこに小さめのテーブルと椅子が置いてあった。

南向きの窓は朝から太陽がよく届く。
新しいモノが人の気配を感じさせることはないけれど
使う人に馴染んだモノからは、その人の佇まいが
醸し出されるように思えてくる。

人とモノの関係性が時間によって育まれていく。
ここにいた人を知らなくても、
その姿が浮かんでくるようだ。

何枚も重ねられた座布団。この高さがぴったりだったのだろう。
机の上に使い込んだ跡がある。使わなければ跡はつかない。使い込まなければ、このような跡にはならない。

 

すごいな!カミーノコネクション

お昼はカミーノのつながりで
初めてお会いする川村さんのお家で
いただくことになっていた。

まだ出会ったこともないどこの誰かも
わからないぼくを家に招いてくださる。
本当にありがたい。

カミーノとは一体何なんだ?
ヨーロッパを歩いているときよりも
東海道のほうがそのことを一層強く思う。

東京からここまで、
カミーノを歩いた人
歩きたいと思っている人に
こんなにも出会えるとは思っていなかった。

しかも、その人たちがとても親切だ。
共通点は、カミーノだけなのに。
本当に不思議なことが起きている。

すごいなカミーノコネクション。

川村さんのお家にお邪魔すると
ドイツレシピのパンを
焼かれているところだった。
ドイツ語で書かれたレシピを見ながら
材料が揃わないなか
奥さんと手探りで作られている。

焼きたてのパンをいただきながら
はじめましての会話をする。

川村さんは日本に半月前に
ドイツから戻ってこられたばかりだそうだ。
興味が湧いてきて
いろいろと質問をしてしまう。

しかし、まだ出会って1時間ほど。
あまり聞きすぎても失礼かと思いつつ
想像をめぐらしながら
会話を楽しんだ。

そして急遽、明日一緒に歩いていただく
ことになった。
ラッキーだ。また話しが聴ける。

明日の集合時間を決めて
失礼させていただいた。

 

黒はんぺんに静岡おでん

その夜も、後輩の実家で美味しい料理をいただく。

黒はんぺん。
昨晩は炙った黒はんぺんをワザビ醤油でいただいたが
今晩はフライ。
後輩は炙りよりもフライが好きだったそうだ。
本人がいないところで聞く話しは面白い。

ちなみに、黒はんぺんは、白はんぺんのように
ふわふわしていない。
平天やさつま揚げのような食感。
色は黒いというよりグレー。
これはサバやアジ、イワシなどの青魚が主原料のため
このような色になるそうだ。

ぼくの故郷の舞鶴にも
イワシのちくわや平天があるので
故郷の味を思い出しながらいただいた。

左のお皿のフライが黒はんぺんのフライ

そして、静岡おでん。
一番びっくりしたのは、おでんに
青のりとダシ粉(鰹節の粉)をふりかけて食べる。
そのふりかけはお好み焼用でしょ!と突っ込んでみたが
静岡ではこれが定番だそうだ。
たしかに美味しかったが、新鮮な味だった。

上のお皿の青のりとダシ粉を好きだけかける。ちなみにふりかけの袋を見せてもらうと、用途にはお好み焼とも書いてあった。

 

ちなみにうちの奥さんの出身地
四国高松は、おでんに味噌をつけて食べる。

うどん屋にいくと
おでんが置いてあるところがある。
うどんにおでん。そしておにぎり。

言葉と料理には地元色が残る。
レストランで食べても
なかなか味わえないが
家庭料理をいただけると
話しもきけて理解が深まるから
一層おもしろい。

今日、1日ゆっくりと時間を過ごして
体を休めることができた。

明日からまた歩き始めるが
明日は川村さんが一緒。
楽しい1日になりそうだ。

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