Lectoure 〜 La Romieu 19km
レクトゥール 〜 ラ・ロミュー 19km

昨晩は教会が運営する
料金寄付制の宿だった。
別の宿を何軒かまわったが断られ
この宿を紹介されてやってきた。

部屋に入るとベスチャンがいた。
その横がベスチャンと仲よくしている
若い女性マリン。
顔見知りの高齢のご夫婦も一緒。
顔なじみたちと過ごす夜は楽しかった。

出発前、ベスチャンに
今日の天気はどう?とたずねた。
ヤマ、今日は不安定な天気で、
昼前から雨が本格的になるみたいだ。
それを聞いて、
今日は、昼頃に到着できる町ラロミューにしよう。
と決めた。

今にも雨が降り出しそうななか
7時スタート。
まだ誰もいない。
しかし、いつものように8時をすぎると
追いついてくる人が出てくる。
今日は、数日前に宿で出会った
7人組のおばちゃん連中。
写真を撮ってあげると、喜んでくれて
メールアドレスを書くから
送ってくれという。

この旅で、かなりの人たちの写真を撮っている。
記念写真みたいなものが多いけれど
送ってくれ!とメールアドレスを聞いた人も
10人で納まらない。
すでにわからなくなりつつある人もいて、
どこかで整理をつけないとあせる。

おばちゃんたちと離れた後は、
薄暗い空の下を一人で歩く。

昨日の町、レクトゥールであったことが
蘇ってくる。
GITEが開く15:00まで、教会のベンチに座って
時間をつぶしていた。
そのときに、係りの人や神父さんが
なにやら準備をされている。
夕方に何かイベントがあるのだろうか。
そう思いつつ、時間が来たのでGITEに向かった。

毎日のルーティーンである
シャワーと洗濯をささっと済ませる。
カメラを持って出て行くと、
教会前に人だかりができていた。

どうしたのだろうと、近づいていくと
制服を着た集団がいる。
よく見ると、消防署関係の人たちのようだ。
彼らは教会入口の脇に整列して陣取っている。
入口の両サイドには、
黒ネクタイに黒スーツを着た人が。

お葬式だ。
そのとき、ようやく気づいた。
まわりにいる人たちの服装はカジュアルだが、
やはり、若干濃いめの服が多いのかもしれない。

やがて、ご遺体を乗せた専用車が到着する。
入口には映画で見たようなコスチュームの神父さんが
出迎える。
神父さんの合図で関係者の手によって
棺桶が車から運び出された。

神父さんの後に続いて教会内へ入っていく。
その後に、親族、制服の消防関係者が続き
一般参列者が入って行った。

教会の鐘がなる。
時刻を知らせる鐘の音とは明らかに違う。
短調のような物悲しい鐘が
5分以上にわたって町に響きわたる。

教会の中から歌が聞こえ始める。
ぼくはその歌がもう少しはっきり聞きたくて
入口に近づいていった。

かなり大きな教会だ。
その中で何百人という人が歌っている。
荘厳だ。なぜか涙がにじむ。
祈り場所であり、歌う場所であり、
人を救う場所であり、冠婚葬祭の場所でもある。
人生につながる場所が教会ということなのか。

日本では、面倒くさいことを解決すると
ビジネスになる。
手間がかかること、やっかいなこと、
よくわからないことは、お金を払って
さっさっと解決してしまう。
その恩恵を受けて、ずいぶんと快適な生活を
送らせてもらっている。

小さい頃、おじいちゃんが亡くなった時は
おじいちゃんの家でお葬式をした。
近所の人たちがたくさん集まってきて、
女性は食事の段取りをし、
男性は式の準備をする。

親族はほとんど寝ずに
準備をしていたのではないだろうか。
大変なことだ。
ただ、人が一人亡くなっている。
それを大変だからと簡単に言ってしまっていいのか、と
教会へ運ばれていくご遺体を見ながら思った。

極論かもしれないが日本では、
アマゾンで商品を購入して翌日届くことと
お葬式が同じ考え方の上に成り立っているように思う。

便利なことや快適なことを手放して
生活しろと言われると、ぼくなど全く無理だ。
生きていけないかもしれない。

しかし、あまりも面倒くさいことから
逃れすぎているのではないか。

結果だけを得て過程がおろそかになっている。

巡礼のゴールに到着するためには
歩かないと着かない。
歩くことを放棄して、
飛行機や電車で言ってしまえば簡単だ。
足も痛くならないし、
毎日の煩わしいことから解放される。
だけど、巡礼の旅は、
結果だけがあっても何も意味もない。
過程があっての結果なのだ。
それが大切なんだと、毎日歩くなかで、
体が少しずつそう叫び始めているのか。

昨日のお葬式のときに頬を伝った涙は、
その叫びが溢れ出たものだったのかもしれない。

 

 

<MOVIE>(撮りっぱなし。編集なしです)

サンティアゴ巡礼道 干し草ロールがラッピングされていきます。

2件のフィードバック

  1. 日に日に旅人になっていきはりますな〜
    その日その場所で感じたことは、当の本人しかわからんですが上山氏が何を思って書き綴ってはるかは文章と写真から伝わってきます!
    反論やないですが、日本のお葬式の事情はもうちょびっと複雑やと思ってます。

    明日もがんばれ‼️

    1. 出発してからもうすぐ1ヶ月になろうとしています。早いものです。何が得られたか、まだ何も得られていないのではないか、と少々焦りつつ前を向く毎日です。どんなコメントでもいただけると励みになります。あんまりキツーイのはへこみますが。。。いつもありがとうございます!

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