イフタールの号砲を今か今かと待っている親子

スースの青い海を背にして
内陸へとおよそ60キロ。

聖なる街カイロアンにやってきた。
ルアージュのドライバーは
何かに急かされるようにスピードを上げ
一時間も経たないうちに、
この乾燥した大地へと運び届けてくれた。

内陸へ入ると、風景は驚くほど一変した。
海沿いの潤いのある気配はどこかへ消え、
どこまでも平坦な大地が広がり始める。

郊外へ出れば、視線の先の先まで、
遮るもののない地平線が続いている。

乾いた風が砂埃を巻き上げ、鼻をくすぐる。
目には見えないけれど、そう遠くないところに
世界最大のサハラ砂漠がある。
その気配に体が敏感に反応しているのだろう。


ここカイロアンで、僕は一人の日本人
山本さんに会うことになっている。

明日からの二日間、彼が活動する「青少年の家」
という場所を見学させてもらう予定だ。

彼は日本で高校の英語教師をしていたが
職を辞すのではなく、教職員対象の休職制度を利用して
JICAの協力隊員として、この遠い地へやってきた。

人はなぜ、住み慣れた場所を離れ、
見知らぬ空の下で誰かのために尽くそうとするのだろう。
その選択の裏側にある物語に、僕はとても惹かれる。

ここチュニジアはアフリカと言っても
昨年まで通ったサブサハラの国々のような
剥き出しの飢えや貧困がここにあるわけではない。
けれど、一見穏やかに見えるこの社会の底にも、
きっと人知れぬ葛藤や痛みが沈んでいるはずだ。

山本さんはここで、どんな課題と向き合い
青少年たちとどんな言葉を交わしているのだろうか。
楽しみだ。

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