A Pena and Piaxe 〜 Hospital 30km
5:40頃スタートするが
空に星は見えず。
ヘッドライトのあかりは
ミストが乱反射して
先がよく見えない。
霧がかかっているのだ。
半袖から露出している腕は
しっとりとしてくる。
カメラも触ると湿っていた。
少しずつ山の輪郭が見え始めても
空のどこかが鮮やかな色に
変化しているわけでもない。
色のないまま夜が明けていく。
朝からすっきり晴れた日が
ここ数日ない。
ガリシア地方は雨が多い地域と
聞いていたが、そのようだ。
時間が経っても状況が変わらないまま
今日はホスピタルという村まで30キロ歩いた。
ここで、フィステーラとムシアに行くルートが
別れるようだ。
ぼくは最初にフィステーラを目指す。
残り30キロ。
約80日ぶりに海を見る。
ぼくが育った舞鶴は、海の町だ。
中学、高校は海を見ながら通った。
そこに海があることがあたり前の環境で育つと
海を見ない日が続くと、
なんともいえない乾きを体が感じるのだ。
地平線を見たいと大陸を目指すが、
いつも終わりになると乾いてくる。
雨で満たされるものではなく
圧倒的な水のスケールを感じないと
癒えるものではない。
今回は長かったので、乾ききっている。
明日はついに大西洋に出会える日。
星空には恵まれないかもしれないが、
乾ききった体を水平線が、潮の香りが
潤してくれるだろう。
かつて欧州の人たちが世界の果てと
呼んだ大西洋は、どんな表情を
見せてくれるだろうか?
いよいよこの旅も終わりを迎える。