フォンセバドン 〜 ポンフェラダ​ 28km
Foncebadón​ ​〜​ ​Ponferrada​ 28km​

昨晩は久々に冬用寝袋を出して寝た。
これまでは暑くて下に敷くだけでも
汗だくになるため避けてきた。
​しかし昨日は山の上。
夕暮れ、散歩に出ると長袖を着ていても寒い。
外で食事をしている人のなかには
ダウンを着ている人もいた。
​寒いのだ。
寝袋に潜り込み
久々に、う〜んあったかいと寝ることに。

しかし、1時ごろ目が覚めた。
山の上だから、もしかして星空が見えないか。
カメラを手に外に出る。
空を見上げるとたくさんは見えないが
ところどころで瞬いている。

撮影してみると、
一部に雲がかかっていることがわかった。
しかし、静かで寒いくらいの屋外で
ゆっくり見上げる夜空は心地いい。
体が冷え寝袋が恋しくなってきたので
満足して部屋に戻った。

​翌朝起きると、雨は降っていないが
霧が立ち込めている。
そのなか6時すぎに出発。
いくつかある宿から巡礼者が
ぞろぞろと出てくる。
​まだ暗い。​
​ヘッドランプをつけて歩いている人が
霧のなかに浮かぶようで幻想的だ。

緩やかに坂をのぼっていくと
しだいにまわりも明るくなってくる。
頂上付近に来たときに
てっぺんに鉄製の十字架が据え付けらた
​大きな柱が見えてきた。
イラゴ峠の「鉄の十字架」だ。

ここはローマ帝国時代、旅の安全を祈願する
祭祀の場であったらしい。
それが中世以降も巡礼者に引き継がれ
持参した石をここに積み上げ
旅の安全を祈願するのだ。

また、ここを故人の供養の場として
考えている人たちもいる。
柱には写真が貼られていたり、​
​故人の思い出のようなものが置かれていたりもする。

昨晩同じ部屋だったイタリア人の若い男性が
ぼくの前を歩いていた。
彼とはスペインに入ってから、所々で会い
何度も同じ部屋になっている。
挨拶すれば笑顔で返してくれるが、
彼が誰かと食事をしたり、
一緒に歩く姿を見たことがない。
ずっと一人で歩き、宿ではスマホか本を読んで過ごす。
クールな印象だ。

彼は何の目的でここを歩いているのだろう。
自分探しか、自分試しか、それとも現実逃避?
いろんなことを彼から想像していた。

鉄の十字架に差し掛かった時、
彼は歩みを止めた。
写真を撮るのかと後ろで見ていると、
十字架を見上げている。
そして、ゆっくりと巡礼者たちが積み上げた
石の坂を登りっていく。
柱の前までくると
ガレ場となっているところで
短パンのまま膝をつき頭を垂れた。

ずっとその姿を見ていた。
他の人も登っては写真を撮り降りていくが、
彼はずっと膝まづいたままだ。

その姿は、スマホをいじっている時の
若者の姿ではない。
大切な人を想う神聖な姿に見えた。
邪魔をしないように、しかし夢中で彼の姿を
写真に納める。
彼は垂れていた頭をゆっくり持ち上げてあげて、
十字架を見た。
そして、ゆっくりと立ち上がり、坂を降りた。

彼が何を想ってこの道を歩いているのか、
想像の域を越えないが、ぼくは彼の姿から
それがわかったような気がした。

その後も、しばらく後ろを歩いていたが、
いつもの彼に戻っていた。
誰かを想い祈る姿に、ぼくは心を奪われる。

イラゴ峠を過ぎ、しばらくすると
一気に1000mほどガレ場を下っていく。
鉄の十字架は、あの場所で1000年以上も
人々の想いと祈りを受け止めてきた。
積み上げらた石以上に、
想いが積み上げれている。

イラゴ峠の鉄の十字架は、
フランス人の道のなかで
忘れらないシーンの一つになった。

山の天気は変わる。晴れと雨の繰り返し。
テンプル騎士団の根拠地となったお城を見学。雲がいかにもの空がだった。
ポンフェラーダの小さな教会。観光地にある重厚で豪華な教会より、地元の人が通う教会のほうが好きだ。

2件のフィードバック

  1. おはようございます。
    先日TV番組の天気予報の中で偏西風の話をしていて、そちらの方も非常に暑くなってると説明してました。
    ゴールが近づいたとはいえ、まだしっかり残ってますよね。
    体調と相談しつつ、無茶はせず若干の無理はしながら頑張ってください。
    帰ってきはるころには、日本でも盛夏が待ってくれてると思いますよ〜〜。

    1. ここ数日は結構寒いんです。朝晩は10度を下回っています。雨続きなので、この雨が上がる週末は暑くなるのだと思います。ゴールまでまだまだ気が抜けません。
      いろんなハプニングはありますが、元気でやってます!ありがとうございます!

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