ルペッシュ 〜 カオール 12km
Le Pech 〜 Cahor 12km

​今日はおさぼりの日。
12km歩いてカオールという町に来た。
ここは、ル・ピュイの道のなかでは
ル・ピュイに次ぐ大きさの町らしい。

数千人と決して大きいわけではないけれど
数十人しかいないんじゃないの?
と思われる村に慣れてしまうと
ここカオールは大都会。

特に何が欲しいというわけではない。
道中で仲良くなって1日に二言三言話をする
人たちがここカオールで旅を終えるから。
一緒にゴールを祝うわけでも、​​
ごはんを食べるわけでもない。

​だけど、町のなかでばったり出会ったら、
彼らにおめでとう!と言ってあげたいと
思ってここでぼくも宿泊することに決めていた。

朝起きて、外に出ると月が見えた。
カオールの町が一望できる場所。ここに行くのがきつい。

ぼくは、咳こんでいる姿が有名なのか、
毎日、咳は大丈夫か、体は大丈夫かと
気にしてもらうことが多い。
ル・ピュイからほぼ同じ日程で歩き続けてきた
カナダ人のおばちゃん2人組がいる。

毎朝、道のどこかで会うのだが、
昨晩、咳は大丈夫だったか聞かれる。
少しずつね良くなっているよ、と答えると、
ある日リュックを下ろして
ゼリータイプのトローチを手渡してくれた。

全部持って行っていいから。
元気になるといいね!って。
道の上で人はやさしい。
お店すらない村が続いたルートでは
薬を手に入れられるだけでありがたかった。

​どしゃぶりのなか、避難するように入った宿。
そこで一緒になった老父婦も同じような日程で
道の上を歩いていた。彼らもカオールで終了。
出会うと、​必ずお互いが立ち止まり
昨日どこに泊まった?今日はどこに泊まる?と
たわいもないことを話して別れる。
それだけのことなのに、仲良くしてもらったことが
忘れられない。
彼らはフランス北東部の自分たちの町に
明日帰るのだそうだ。

​道というのは面白い。
そこに何があるわけではないのに
歩いている人を仲良くさせる。
そして、何の変哲もない道を歩きながら
ぼくを追い越していった人たちのことを
回想する。

確実に彼らは、ここを越えていったんだ。
そう思うとうれしくなる。
カートを引いて歩いていたフランス人エマヌエル。

雨のなかを歩いてできた轍のなかに
車輪の跡を見つけると、もしや彼ではないかと
思ってしまう。
彼のタイヤのパターンをなんとなく覚えているので、
それっぽいとうれしくなったりする。
自転車で駈けていく人もたくさんいるから
彼のパターンが残っているはずもないのにだ。

彼のスピードなら、一気にこの坂道を
駆け上がったはずだ。
彼女なら、この花を見つけて写真を撮ったに違いない。
想像は膨らみ、まるで彼らと一緒に歩いているような
気分になってくる。

何もないという環境は想像力を掻き立てる。
そのなかで遊び、その人に思いを馳せる。

彼らは今、どこを歩いているだろうか。
ぼくがそう思う時、彼らも同じ空の下
そう思っていてくれるのではないだろうか。

信じていいように思う。

誰が置いたのか。想像するだけで5分は楽しめる。
カオールは大きな町。こんな風景久しぶりに見た気分。

 

 

<MOVIE>(撮りっぱなし。編集なしです)

サンティアゴ巡礼道 カオールの街並み

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